マヌルネコはなぜ丸い?長い毛・短い足・寒さへの適応を解説
マヌルネコがなぜ丸く見えるのか。答えは、ネコ科でもっとも密な毛と、短い足、平たい頭です。どれも寒くて開けた高地で生きるための形です。
あらすじ
この記事では、次の10項目を順に説明します。
- マヌルネコがなぜ丸いのか、答えは「毛」と「足」と「頭」
- マヌルネコの毛はなぜ丸く見せるのか
- マヌルネコの足はなぜ短いのか
- マヌルネコの頭はなぜ平たいのか
- マヌルネコはなぜ「カクカク動く」と言われるのか
- マヌルネコは太っているから丸い?
ほか4項目は下の目次から。
目次
マヌルネコがなぜ丸いのか、答えは「毛」と「足」と「頭」
マヌルネコがなぜ丸く見えるのかは、体の3つの部分で説明できます。長くて密な毛、短い足、そして平たい頭と低い耳です。
| 部分 | どうなっているか | 何の役に立つか |
|---|---|---|
| 毛 | 長く、密で、冬はさらに厚くなる | 寒さをふせぐ。雪のある岩場にまぎれる |
| 足 | ほかのネコ科より短い | 低い姿勢で獲物に近づく |
| 頭と耳 | 頭が平たく、耳が横の低い位置にある | 岩のかげからのぞいても見つかりにくい |
| 尾 | 太くて長い毛におおわれている | 体に巻きつけて暖をとる |
ポイントはここです。マヌルネコの体そのものは、イエネコとほとんど同じ大きさです。研究者の資料は、「イエネコほどの大きさだが、足が短く毛が厚いので、ずんぐりして見える」と説明しています。丸さの正体は、体型より毛です。
マヌルネコの毛はなぜ丸く見せるのか
マヌルネコの毛は、温帯にすむネコ科の中でもっとも密だとされています。世界自然保護基金(WWF)の記事では、1平方センチメートルに約9,000本の毛が生えていると紹介されています。
おなか側の毛は、背中や横の毛のおよそ2倍の長さがあります。おなかの長い毛が足のつけ根をおおうので、立っていても足が短く見えます。毛の長さの違いは研究資料にある事実で、見え方の説明はこのサイトの見方です。これが「丸い」「足がない」ように見える大きな理由です。
毛は季節で変わります。
- 冬:長く、密で、色が白っぽくなる。霜がついたような見た目になる
- 春:毛がぬけかわる。赤みがかった色になることが多い
- 夏:短く、濃い色になる
つまり、同じ個体でも冬がいちばん丸く見えます。春に毛がぬけかわると、ひと回り小さく見えます。
マヌルネコの足はなぜ短いのか
マヌルネコの足は、ほかのネコ科と比べて短く、爪も短いのが特徴です。名古屋市(東山動植物園)の解説でも、この点がはっきり書かれています。
短い足は、低い姿勢で獲物に近づくのに向いています。マヌルネコは獲物を走って追いかけるのではなく、岩のかげをゆっくり進んで近づき、最後に飛びかかります。体を地面すれすれにたもてる短い足は、この狩りに合っています。
研究者の資料によると、マヌルネコは雪が15〜20cmより深く積もる場所にはすんでいません。ロシアのザバイカル地方では、雪の深さが16〜17cmのところが分布の北東の端になっています。短い足と深い雪の関係は資料に書かれていないので、ここでは事実だけを紹介します。
マヌルネコの頭はなぜ平たいのか
マヌルネコの頭は幅が広く、平たい形です。耳は頭の上ではなく、横の低い位置についています。
これは、開けた土地で狩りをするときに身を隠すための形だと考えられています。岩のかげから目だけを出してのぞいても、耳が上に出ないので見つかりにくいのです。頭が平たいと、体の輪郭がなめらかになって、ますます丸く見えます。
マヌルネコはなぜ「カクカク動く」と言われるのか
マヌルネコは、動物園で「カクカク動く」「ロボットみたい」と言われることがあります。研究者が記録している動き方から、理由を考えることができます。動き方の見え方そのものを扱った資料は、探した範囲では見つかりませんでした。
マヌルネコの狩りの基本は「しのび寄り」です。岩のかげをとてもゆっくり進み、止まり、また進む。止まっているときは小さな石のように見えます。進んでは止まる動きが、毛で足が隠れた丸い体で行われるので、人の目には「カクカク」と映ります。
もう1つは、短い足です。足が短く、体の下に隠れているので、歩いても足の動きがほとんど見えません。丸い体がすべるように移動して、急に止まる。この見え方が「カクカク」の正体です。
マヌルネコは太っているから丸い?
マヌルネコが丸いのは太っているからだ、と思う人もいます。半分は当たっています。WWFの記事は、丸さの理由として、密な毛と厚い脂肪の層の2つをあげています。どちらも寒さから体を守るものです。
ただし、体重そのものはイエネコと変わりません。野外調査では平均4kg、いちばん太る夏の終わりでも5.3kgです。冬から早春の繁殖期には、オスが14日で1kg以上やせた記録もあります。春にやせて毛もぬけかわった姿は、冬とは別の動物のように見えます。体重の数字はマヌルネコの大きさでくわしく紹介しています。
マヌルネコの丸い体は岩に化ける
マヌルネコの丸さは、隠れるための形でもあります。毛の色は銀色がかった灰色、赤みがかった灰色、濃い灰色と幅があり、1頭が1年のうちにこの色を全部通ることもあります。
丸い体に、ぼんやりした黒い縞。岩場にうずくまると、小さな石にしか見えません。研究者の資料には「じっとしているとき、マヌルネコは小さな石に見える」と書かれています。白いおなかにも役目があります。上からの光で背中が明るく、おなかが影になるのを白い毛が打ち消し、空を飛ぶワシやタカから体の輪郭を見えにくくしています。
マヌルネコの丸さは寒さへの備え
マヌルネコがすむ場所は、寒くて乾いた高地です。研究者の資料によると、ロシアのダウリア地方では、1年の気温の差が100℃を超えることがあります。インドのヒマラヤ山脈の北側では、冬に零下30℃まで下がります。
厚い毛は、この寒さをふせぐ毛布です。太い尾も役に立ちます。WWFの記事では、尾を体に巻きつけて暖をとったり、冷たい地面に足をつけないように尾の上に座ったりすると紹介されています。
マヌルネコの体は、寒さと、開けた土地での狩りと、空から襲う鳥に見つからないこと、この3つに合わせてできています。丸いのは、かわいく見せるためではなく、生きるための形です。
瞳孔も丸い
マヌルネコは、目の瞳孔(どうこう=目の中の黒い部分)も丸い形をしています。イエネコなど小型のネコ科の多くは縦に細い瞳孔ですが、マヌルネコは人と同じように丸く開いたり閉じたりします。
研究者の資料では、丸い瞳孔は昼に狩りをする動物や、開けた土地にすむ動物に見られる特徴だとされています。目の話はマヌルネコの目と瞳孔で、しっぽの話はマヌルネコのしっぽでくわしく紹介しています。