マヌルネコの生息地はどこ?国・標高・気温とエベレストでの記録
マヌルネコの生息地は、モンゴル・中国・ロシア南部を中心とした中央アジアの高地です。標高440mから5,593mまで、寒くて乾いた草原と岩場で暮らしています。
あらすじ
この記事では、次の9項目を順に説明します。
ほか3項目は下の目次から。
目次
マヌルネコの生息地は中央アジアの高地
マヌルネコの生息地は、西はイランから東はモンゴルまで、アジアの内陸に広がっています。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(2020年)は、次の国を生息地としています。
| 区分 | 国 |
|---|---|
| 現在も生息している | アフガニスタン、ブータン、中国、インド、イラン、カザフスタン、キルギス、モンゴル、ネパール、パキスタン、ロシア、トルクメニスタン |
| 生息している可能性がある | タジキスタン、ウズベキスタン |
| 絶滅した可能性がある | アルメニア、アゼルバイジャン |
ポイントはここです。数が多いのはモンゴル、ロシア南部(シベリア南部)、中国。西に行くほど分布はとぎれとぎれになり、カスピ海のまわり、アフガニスタン、パキスタン、インド北部では少なく、孤立しています。
マヌルネコの生息地の標高
マヌルネコの生息地は、標高440mから5,593mまで記録されています。多くは高地の草原と岩場です。
とくに高い記録はネパールにあります。研究者の資料によると、ネパール北西部ドルパ地方の標高5,500mを超える場所で、ふんのDNA分析によってマヌルネコが確認されました。これが生息地の中でもっとも高い記録です。
マヌルネコの生息地はエベレストにもあった
マヌルネコの生息地として、2023年1月に世界的なニュースになったのが世界最高峰エベレストです。
アメリカの野生生物保全協会(WCS)の発表によると、調査は2019年4〜5月に行われました。ナショナルジオグラフィックとロレックスの「永続する地球」エベレスト遠征の調査チームが、エベレスト南側のサガルマータ国立公園でふんを採取したのです。採取した場所は標高5,110mと5,190m、約6km離れた2か所です。
ふんのDNAを調べると、少なくとも2頭のマヌルネコがいることが分かりました。ふんの中からは、ナキウサギと、山にすむ小さなイタチの仲間(マウンテンウィーゼル)のDNAも見つかっています。マヌルネコの食べものそのものです。
この成果は、ネコ科専門家グループの会報 CATnews の76号(2022年)に発表されました。写真は撮れておらず、ふんが唯一の証拠です。それでも、人が何十年も登り続けてきた山に、気づかれずにマヌルネコが暮らしていたことになります。
マヌルネコの生息地の気温
マヌルネコの生息地は、寒くて乾いた「大陸性気候」です。研究者の資料によると、ロシアのダウリア地方では、1年の気温の差が100℃を超えることがあります。インドのヒマラヤ山脈の北側では、冬に零下30℃まで下がります。
この寒さに耐えられるのは、ネコ科でもっとも密な毛のおかげです。毛の話はマヌルネコはなぜ丸い?でくわしく紹介しています。
ただし、雪には弱いのです。マヌルネコは、雪が15〜20cmより深く積もり続ける場所にはすんでいません。ロシアのザバイカル地方では、最大積雪16〜17cmの線が分布の北東の端になっています。
マヌルネコの生息地の環境
マヌルネコの生息地に共通するのは、「草原」と「岩」です。
- 高地の草原や、低木のまじったステップ(乾いた草原)
- 岩が露出した場所、谷、ガレ場(岩のかけらが積もった斜面)
- 休んだり子育てをしたりするための岩のすきまや、マーモットなどの巣穴
研究者の資料によると、短い草しかない開けた土地や、低地の砂漠にはめったにいません。獲物が多いときだけ、一時的に使うことがあります。岩のかげに隠れながら、草原のふちでナキウサギやネズミをねらう。これがマヌルネコの暮らし方です。食べものはマヌルネコの食べものにまとめました。
マヌルネコは生息地にどのくらいいる?
マヌルネコは、生息地の中でもまばらにしかいません。研究者の資料によると、モンゴルの良い環境でも100平方キロメートルに4〜8頭です。同じ地域のほかの肉食動物と比べて、とても低い密度です。
一方で、ロシアのダウリア地方では、16平方キロメートルで16頭がつかまった調査があり、場所によってはずっと密に暮らしています。獲物の多さと、天敵の多さで差が出ると考えられています。
1頭が使う範囲(行動圏)は広いのが特徴です。モンゴルではメスが平均23平方キロメートル、オスが平均99平方キロメートル。岩場がどのくらい点在しているかで、広さが変わります。ダウリア地方ではメス10平方キロメートル、オス27平方キロメートルと、ぐっと狭くなります。
マヌルネコの生息地に日本は入っていない
マヌルネコの生息地に、日本はふくまれていません。野生のマヌルネコがいるのはアジアの内陸だけです。日本で会えるのは動物園のマヌルネコで、名古屋市の発表によると、2025年末の時点で国内9施設に22頭がいます。
日本の動物園では、生息地の岩場に似せた展示場をつくっているところがあります。会える場所は日本でマヌルネコに会える動物園に、世界の動物園は世界でマヌルネコに会える場所にまとめました。
マヌルネコの生息地はどうなっている?
マヌルネコの生息地は、放牧地や農地への転用、鉱山や道路の開発で、少しずつ細切れになっています。ネズミやナキウサギを毒で駆除すると、マヌルネコの食べものがなくなります。
IUCN のレッドリストでは、2020年の評価で「軽度懸念(LC)」になりましたが、成熟した個体の数はおよそ58,000頭で、減っているとされています。くわしくはマヌルネコは絶滅危惧種?で説明しています。
出典
- IUCN レッドリスト:Otocolobus manul(2020年の評価)
- CATnews 特別号13「マヌルネコの現状と保全戦略」(2019年、PICA と IUCN ネコ科専門家グループ)
- IUCN ネコ科専門家グループ:マヌルネコの種の解説
- 野生生物保全協会(WCS):First report of rare cat discovered on Mt. Everest(2023年1月)
- Mongabay India:Manul, the grumpiest cat, confirmed on the world's highest mountain(2023年3月)
- 名古屋市:東山動植物園のマヌルネコの転出について(2026年5月)